「事業資金が足りない」「事業拡大に大きな資金が必要」という状況になったことがある事業者は多いでしょう。
事業者向けの手軽な資金調達方法として、ファクタリングやビジネスローンなどがありますが、どちらの方法を選択するのが最適なのでしょうか。
本記事では、そもそもファクタリングやビジネスローンとは?や、ファクタリングとビジネスローンの違い、それぞれの特徴などについて解説します。
ファクタリングとビジネスローンで、資金調達の方法に悩んでいる個人事業主や法人経営者の方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
目次
ファクタリングとビジネスローンを比較
ファクタリング | ビジネスローン | |
---|---|---|
資金調達額 | 売掛金=限度額上限 | 銀行系 3000万円~1億円 ノンバンク系 300万円~1000万円 |
審査難易度 | 取引先の業績の安定性 | 申し込み者の事業の安定性 |
金利 | 売掛金の10%~20%前後 | 銀行系 5%~10%前後 ノンバンク系 10%~15%前後 |
返済期間 | 2社間 売掛金入金の30日~45日以内 3社間 事業者は返済不要 |
毎月の分割返済(契約によるが、1年~10年程度) |
手数料 | 融資額の10%~20%前後 | 年率5%~15%前後 |
信用情報 | 信用情報の履歴には残らない | 信用情報に履歴が残される |
ファクタリングとビジネスローンの違い
本章では、ファクタリングとビジネスローンそれぞれの違いについて各項目ごとに詳細を確認していきましょう。
資金調達額
まず、資金調達できる限度額を確認していきましょう。
ファクタリング
ファクタリングでは売掛金=限度額上限となります。売掛金をファクタリング会社へ売却して資金調達するため、売掛金が小さければその分のお金しか現金化できません。
ビジネスローン
ビジネスローンの場合、ノンバンク系ビジネスローンでは300万円~1000万円、銀行系ビジネスローンでは3000万円~1億円ほどの限度額となっています。
審査難易度
ファクタリング
ファクタリングの場合は、「売掛金の回収見込みがあるか」を審査されます。つまり、ファクタリングを利用する会社の審査ではなく、取引先の業績が安定しているかどうかが審査の対象となります。
ファクタリング会社は売掛金が回収できれば問題ないため、向こう1~2ヶ月の取引先の業績の安定性さえ確認できれば、ファクタリングによる資金調達が可能でしょう。
ビジネスローン
一方、ビジネスローンであれば、申し込み側の事業の安定性を審査されます。
また、事業規模によって審査内容が若干異なります。法人である場合は、決算書や登記事項証明書などでの審査、個人事業主であれば確定申告書による収益=年収での審査となります。
事業に十分な収益がなく赤字経営である場合など、返済の見込みがないと判断される場合は審査に落とされます。ただし、ノンバンク系のビジネスローンであれば審査基準も緩やかなので、そこまで難しく考える必要はないでしょう。
金利
ファクタリング
ファクタリングは、融資商品ではないため金利は発生しません。ただし、売掛金をファクタリング会社に売却する際に手数料が発生します。
利用先のファクタリング会社によって手数料は異なりますが、売掛金のおよそ10%~20%程度が手数料の目安となります。
また、取引先の業績があまり良くない場合は、倒産のリスクから手数料が若干高くなることもあります。
ビジネスローン
ビジネスローンの金利は、銀行系ビジネスローンでは5%~10%、ノンバンク系ビジネスローンでは10%~15%ほどとなっています。
銀行系ビジネスローンの方が低金利ですが、その分審査難易度が高くなる傾向があります。
返済期間
ファクタリング
2社間ファクタリングの場合、返済期間は売掛金が入金される30日~45日以内で、取引先からの売掛金回収後にファクタリング会社へ一括返済します。
また、3社間ファクタリングの場合は、ファクタリング会社と取引先が直接やり取りを行うため、事業者はファクタリング会社へ返済不要です。
ビジネスローン
ビジネスローンの返済方法はファクタリングとは異なり、毎月の分割返済となります。返済期間は契約により異なり、1年~10年程度となっています。
手数料
ファクタリング
金利の項目で少し触れましたが、ファクタリング利用時には融資額の10%~20%ほどが手数料として必要となります。
ビジネスローン
ビジネスローンは手数料不要なのですが、年率5%~15%ほどの金利が発生します。
信用情報の履歴
ファクタリング
ファクタリングの場合は、あくまでも「売掛金の繰り上げ回収」となるので、融資ではありません。このため、信用情報の履歴には残りません。
また、売上として計上できるため、ファクタリングを利用しても今後の融資には影響がありません。
ビジネスローン
ビジネスローンは金融商品となるため、利用すれば信用情報に履歴が残されていきます。返済に遅れたりする場合、信用情報に傷が残ってしまいます。返済に送れないようにしっかりと返済を続けておきましょう。
また、ビジネスローンから借り入れることで、今後融資を受ける際に少なからず影響があるでしょう。例えば、ビジネスローンで高額な融資をすでに受けている場合、新規で他社のビジネスローンを利用するのは難しいでしょう。
ファクタリングとは?4つの特徴
ファクタリングというサービスに馴染みがない、聞いたことがない、という事業者も多いかもしれません。
ファクタリングとは、「取引先の売掛金をファクタリング会社へ売却して現金を受け取る」金融サービスのことです。
売掛金を取引先から回収する前に、債権を売却して資金を調達する方法です。ファクタリングの特徴を確認していきましょう。
- 最短即日で資金調達可能
- 事業の業績は審査に影響しない
- 2社間ファクタリングは取引先にバレない
- 融資ではないため信用情報には影響しない
最短即日で資金調達可能
ファクタリングは、最短即日で資金の調達が可能な場合があります。資金調達までとてもスピーディーなのは大きなメリットと言えるでしょう。
「取引先の売掛金の回収が遅れていて運転資金が足りない…」という時など、とても便利に利用できる資金調達方法となります。
事業の業績は審査に影響しない
ファクタリングの審査には、事業の業績は関係しません。ビジネスローンの場合、事業の業績=信用度として見られるため、基本的に赤字経営の場合であれば融資してもらえません。
しかし、ファクタリングは融資サービスではないため、取引先の売掛金さえあれば業績に関係なく資金調達できるのです。つまり、赤字経営の事業者でも未回収の売掛金があれば、即日で資金を調達できる可能性があります。
2社間ファクタリングは取引先にバレない
ファクタリングには、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがあります。
2社間ファクタリングでは「事業者とその取引先」間、3社間ファクタリングでは「事業者とその取引先とファクタリング会社」間での契約となります。
3社間ファクタリングの場合は、取引先にファクタリングの利用の承諾を得ることになります。一方、2社間ファクタリングの場合はファクタリング会社が表に出てこないため、取引先にファクタリングの利用がバレることはありません。
ただし、2社間ファクタリングの場合は、売掛金が入金された直後にファクタリング会社へ一括返済が必須となる点には注意しておきましょう。
取引先にファクタリングがバレたくない事業者は、利用する前に2社間ファクタリングか3社間ファクタリングかをしっかりと確認しておく必要があります。
融資ではないため信用情報には影響しない
ファクタリングは、ビジネスローンのような融資のサービスではありません。そのため、いくらファクタリングを利用しても信用情報にはファクタリングの利用履歴が残らないのです。
売掛金をファクタリング会社へ売却する行為なので、会計上では「売上」として扱われます。
ビジネスローンとは?3つの特徴
一般消費者向けのカードローンをご存じの方は多いと思いますが、ビジネスローンという金融商品はあまり馴染み深くないでしょうか。
ビジネスローンとは、個人事業主および法人経営者のみが申し込める事業資金専用ローン商品のことです。
多くの場合、原則無担保・無保証にて融資を受けられることがほとんどです。ビジネスローンの特徴を確認していきましょう。
- 最短即日で資金調達可能
- 無担保でお金を借りられる
- 銀行系とノンバンク系のビジネスローンがある
最短即日で資金調達可能
ビジネスローンは、ファクタリングと同じように最短即日でスピーディーに資金調達できる場合が多いです。
ただし、利用先の金融業者によって融資までの日数が異なるため、急いで資金調達したい人は申し込む前に、融資まで最短どのくらいなのかを前もって確認しておきましょう。
無担保でお金を借りられる
一般的なビジネスローンは、無担保でお金を借りられる場合がほとんどです。不動産や有価証券などの担保を用意する必要がないため、手軽でスムーズな申し込みが可能です。
ただし、無担保ローンでは事業の業績が信用度となるため、売り上げの小さな事業者はあまり高額なお金を借りられない傾向があります。
銀行系とノンバンク系のビジネスローンがある
ビジネスローンには銀行が提供する銀行系ビジネスローンと、消費者金融などの貸金業者が提供するノンバンク系ビジネスローンがあります。
おおまかに2種類の違いについて説明すると、銀行系は金利は低いが審査難易度が高い傾向、ノンバンク系は金利は高いが審査難易度が低い傾向にあります。
ノンバンク系のビジネスローンであれば、審査難易度が低いため、小規模の事業者や個人事業主なども審査通過が期待できるでしょう。
ファクタリングとビジネスローンで中小企業に向いているのは?
どのような状況下で、ファクタリングとビジネスローンがおすすめなのでしょうか。中小企業の事業者の利用シーンに応じた資金調達方法を確認してきましょう。
売掛金が回収できない場合
ファクタリングが最適
取引先からの入金が遅れていて、売掛金が回収できずに一時的な資金不足になっている場合は、「ファクタリング」による資金調達がおすすめです。
ファクタリング利用時には10%~20%ほどの手数料が必要となりますが、未回収の売掛金があり、運転資金が足りなくて困っているという事業者にはファクタリングがおすすめです。
少額の融資を一時的に受けたい場合
無担保のビジネスローンが最適
「少しだけ運転資金が足りない!」「短期間だけお金を借りたい!」という中小企業の事業者は、無担保のビジネスローンがおすすめです。ビジネスローンは金利が高い傾向にありますが、ファクタリング同様に融資までスピーディーなので、すぐに資金調達が可能です。また、借りたいだけの金額の融資を受けられるため、必要最低限のお金を借りられます。
売掛金がなく業績もあまり良くない場合
ノンバンク系ビジネスローンが最適
「売掛金もなく会社の業績もあまり良くないが、運転資金を借りたい」という事業者は、消費者金融などのノンバンク系ビジネスローンを利用してみましょう。
ノンバンク系ビジネスローンは、審査基準が緩やかな傾向にあるため、業績が悪くても「今後の事業の展望」がしっかりしていれば、融資を受けられる可能性があります。
業績に自信がない事業者の人でお金を借りたい人は、一度ノンバンク系ビジネスローンを提供している金融業者へ相談してみましょう。
まとめ
状況次第でファクタリングとビジネスローン、資金調達方法を使い分ける
今回は、中小企業の事業者が利用しやすい資金調達方法であるファクタリングとビジネスローンについて解説してきました。
それぞれ最短即日で資金が調達できるスピーディーなサービスですが、「売上(=ファクタリング)」か「融資(=ビジネスローン)」かの大きな違いがあります。
中小企業の事業者が資金調達する時、ファクタリングかビジネスローン、どちらを利用すれば良いのか悩んでしまうこともあるでしょう。資金調達の方法は、利用シーンによって使い分けるようにしてください。
ぜひこの記事を参考にしながら、中小企業の事業者は資金調達の方法についてしっかりと検討し、ベストな資金調達方法を選択するようにしてください。